訳あって中上健次の『岬』という短篇を読んでいる。
本文を読む合間、著者のプロフィール欄に目をやると、
中上健次が村上春樹とほぼ同じ年代であることに
改めて驚かされた。ちなみに中上は1946年、
村上は1949年の生まれ——所謂「団塊の世代」である。
中上独特の文体から、
村上よりもう少し上の世代(1940年代前半生まれ)
だろうと勝手にタカをくくっていたのだが、
考えてみればどちらも高校時代に
大江健三郎の作品と出会っているわけで、
だとするとこれくらいの年代でなくてはなるまい。
「時代を担う純文学の旗手」として
国内で広く認められた中上健次と、
現在でも文壇でその存在をほとんど無視され、
しかし国際的には高い人気を誇る村上春樹。
一見、まったく対照的な人生を歩んできたふたりだが、
意外と共通点が多い。
まず『千年の愉楽』と『羊をめぐる冒険』という
両者の代表作は同じ年(1982年)に発表されている。
そして吉本隆明はこの2作品に
大江健三郎の『「雨の樹」を聴く女たち』を入れた3作を
この年発表された作品BEST3に選んでいる。
また90年代にそれぞれ大きな社会的事件と出会っている。
中上の場合は湾岸戦争であり、
村上の場合は阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件である。
中上は1992年に亡くなるのでなんともいえないが、
村上の場合はこれ以後、作品に変化が見られるようになる。
最後に、どちらもジャズを愛好していることを公言しており、
1960年代の後半には「ヴィレッジ・ヴァンガード」という
ジャズ喫茶に足繁く通っていたという。
新宿でふたりが擦れ違っていた可能性は高い。
さらにこの店で昼間にバイトをしていたのが永山則夫、
遅番のバイトをしていたのが北野武。
ううむ、すごい顔ぶれだ。
新宿争乱事件や庄司薫の小説からも伺えるように、
当時の新宿は「なにか起こりそうな予感」に
満ちた街だったことがわかる。
今世紀も最初の10年が終わろうとしている現在、
このような「予感」を抱かせるような街というと、
良くも悪くも秋葉原、ということになるのだろうか。
【参考文献】
『吉本隆明対談選』(講談社文芸文庫)
『東京大学[80年代地下文化論]講義』(宮沢章夫, 白夜書房)
『村上朝日堂』(村上春樹・安西水丸, 新潮文庫)
『世界は村上春樹をどう読むか』(国際交流基金企画, 文藝春秋)







